国力の基本は経済力・軍事力
― ウィークジャパンからストロングジャパンへ ―




三番目に登壇したのが田久保氏です。自称親米愛国主義者と語る田久保氏は、軍関係の戦略を含めて、現代日本のあるべき戦略を、具体的に提示してくれました。氏はまず日本外交への批判から話を始められました。


田中真紀子外務大臣は、国家の直面する問題、憲法や教育、防衛に関する問題をきちんと理解していないと、氏は断罪します。そもそも日本の教科書は中国や韓国のような国定教科書ではなく、民主主義的なシステムにのっとって書かれているものである、と。

また、李登輝氏のビザの問題は、淡々と出すべきであって、ビザを出してはいけないと考える外務省には非常に問題がある。ことに河野外務大臣とアジア太平洋局長がビザを出さない方向でがんばった、と、彼らを批判していました。

さらに、靖國神社の問題では、アメリカではその墓地に慰霊に行き、敬虔な祈りを捧げるのは当然であるのに、日本でそれができないのはなぜか。当時の中曽根総理の時におきたA級戦犯の合祀問題によって、でてきた。自分が中国にいって中国の高官に直接この話をすると、なんの反論も出てはこないのであるから、言いたいことを淡々と言えばいいのである。しかし日本の外務省には、そんなこともできない。そう嘆いておられました。

日本を軍事大国であると非難する中国には、三百万人の兵士がいる。それに比して日本には二三万人。ケ小平の時代に軍事費の削減のために減らされた兵士が百万人で、日本の兵士の総数よりもはるかに多い。また、中国では、四三回もの原爆実験が行われ、なおかつ八九年以降の軍事費の伸びが二桁にのぼっている。その軍事費も、実は、表面に出ている軍事費の項目以外に、他の費目として多くの軍事費が隠されていると言われている。そのような国に、軍事大国などと呼ばれるいわれはない。と、中国の軍事大国化に対して軽い警鐘を鳴らしながら、そのような根拠のない外圧にへこたれてしまう日本の外務省を批判されました。

さらに、その中国の軍艦が津軽海峡を通って、昨年五月に入ってきた状況を、国際法では全力で通過しなければならない。しかし、ゆっくり通り、反転などをしたなどと詳細に述べられ。この国際法違反の行為の理由は、自衛隊の基地の交信記録や米軍の交信記録をとろうとした諜報活動であったのだろうと、予測されていました。このような国際法違反行為があっても、外務省は該当国に対して何も言わないのだそうです。これを田久保氏は、「国益無視であろう」と言われていましたが、まことに恥ずべきありようであると、私も思いました。外務省は日本国を外国に売り渡すつもりなのでしょうか。


このように外務省の姿勢を批判されて後、田久保氏は、「ユーラシアの地政学」という論文に寄せて、外務省の驚くべき弱腰と、日本国のこれからのあり方について、自衛隊の問題を含めて次のように語られています。この論文は、コロンビア大学の教授からカーター大統領の安全保障担当の大統領補佐官になったブレジンスキーが、フォーリンアフェアーズという雑誌に三年前書いたもので、日本経済新聞社からその全訳が書物として出版されているということです。

このページの本題は、私がつけています。また、長くなってしまったので、切れのいいところで小見出しをつけています。これは、私が考えて勝手につけたものです。講演そのものは、切れ目なく、歯切れよく、楽しく進みました。

田久保忠衛氏



日本はアメリカの事実上の属国である



そこには、日本はアメリカの事実上の属国である、従属国である、被保護国、デファクト プロテクティド オブ ザ ユナイテッド ステイツ(De Fact Protected of The United States)であると書いてあるんです。被保護国ですよ。被保護国というのはどういうものかというと、外交防衛がどうにもならない、宗主国の意のままになる国のことなんですね。日本は事実上そういうふうになっちゃってると書いてある。このような被保護国というのはどういうところにあるかというと、(昔は沢山ありましたけれども、今は植民地時代ではないので、消えちゃってるんで、)今、被保護国というのは、アンドラ、という国とモナコでございます。モナコというのはあのご存知のように、ばくちのテラ銭で食っている国ですね。アンドラという国、これ、私は国際問題をやっているんだけれども知らなかった。フランスとスペインの間にある人口七万。外交防衛はもうぜんぜんだめで、これをフランスとスペインに「お願いしますよ」と、預けている国なんです。こういう国と同じように日本を、ブレジンスキーは見ているわけです。

日本に「強くなれ強くなれ」と言うんだけれども一向にやろうとしないから、「もうやらなくていいだろう、二一世紀はこのままあんたがた進めばいいじゃないか」と。ただしこの国は金儲けがうまいから、「お前さんたちは金儲けに専心して、それを貯めなさい。貯めたお金はこれは全部ばら撒きなさい」と。「それで世界の平和に役立っているという使命感を与えれば、ずーーーーーーっとこの国は今のまんまだ」と。で、「その代わり、アメリカの事実上の被保護国の立場を続ければいいではないか」と。

これ、痛烈な皮肉であります。ただしブレジンスキーはよく見ている。「保護国条約というのは日米安全保障条約ですよ。」と言ってるんです。日米安全保障条約というのは片務性なんです。アメリカが一方的に責任をもって、日本はほとんどなにもやらない。こういう片務性なんです。この片務性に気が付いたのは岸信介で、岸信介が60年安保をやろうとした根本の狙いは、「独立国になりたい。それには、国内の争乱事件も自分で押さえられずに、占領軍みたいなアメリカの軍隊に出動を要請するなどということは、独立自主の精神に反する。」これを少しでもいいから平等の方に直そうとした。この時、大騒動が起こって、国会がああいうふうになってしまった。

以後の総理大臣、政治家は、軍事安全保障に手をつけるとこれは票にならないというので、ぜんぶ、逃げたんです。私はだから、全員みんな、もう、だめだと思いますよ。どうですか。池田さんは所得倍増計画、経済の方に突っ走った。佐藤さんは沖縄返還。その他の総理大臣も、今に至るまで、防衛の「ぼ」の字も言わないじゃないですか。私はここに、この国家の、根本的な欠陥があるというふうに思っているわけでございます。



外務省の「外交」姿勢




そこでですね、もう少し話をすすめたいんでございますけれども。外務省。外務省の人達がどういう発言をしてるか、私は調べたことがある。小和田雅子妃殿下のお父さんの小和田さんが、外務次官だった頃、今から七・八年前でございますかねぇ、八・九年前ですかねぇ。平山郁夫という東京芸大の、学長さんがいらっしゃる。中国 ベタベタ の方で、李登輝前総統の訪日に際して、これはけしからんという声明を出された方でございます。その方が、「小和田さん、二一世紀日本はどういう方向へ進むべきなんですか、あなた外務省のナンバーツーであるから教えてほしい、」と、プレジデントという雑誌で対談しています。小和田さんは、「我々の向かう方向の選択肢は三つあります。ひとつ、国際国家なんてそんな大きなこと言わないことですよ。清く貧しく美しく、これは戦争に負けた、ああいう状態を、ひっそりこの島で続けていくんです。」二番目、これはあの当時、小沢一郎が普通の国と言ったでしょう、これを少し意識したんでしょう。小沢さんは、なんでもない、くだらない、くだらないと言っちゃおかしいけれども、「普通の国がやることを我々もやるっつーーーの」ということを言っているだけの話なんですよ。それを小和田さんは、「経済に見合った、これに見合ったバランスのとれた軍事力を持つという意見。これが第二の意見だ」と。三つめ、小和田さんは一はだめ二もだめと言ってるんですよ、無言のうちに。三つめ、「我々はハンディキャップを背負った国ということを十分認識すべきです。したがって、軍のところはもう消しましょう、と。これはもう嫌です。軍事的なもの、国際貢献であっても軍という名のつくものは全部、嫌。その代わり、お金で片をつけましょう。他の国が百ドル出すのであれば我々は、二百ドル三百ドル、この覚悟ができれば、これが一番いいです。」と言うわけです。私はその覚悟できないんですよ、「冗談じゃねーーーっ」てことなんです。

これはまぁこれでいいです。小和田さんがそうおっしゃった。

それから数年経ちまして、斎藤邦彦さんという、次官が、この方は駐米大使になって、今はJAICAの総裁ですけれども、この方が、アメリカに大使で赴任する前に、丸の内の日本記者クラブで会見をやった。その時の質問にこたえて、「小和田前次官はハンディキャップ国家ということを言われた。これこそ我々の行く道だと思います」と、この人も、明言しているんです。

それからしばらく経ちまして、今から数年前でございますが、ロンドンからお帰りになった藤井さんという大使、イギリス大使でございますけれども、これは私も関係しているある組織のシンポジウムで、日本がこれから向かうべき方向は、「経済と文化以外にはない。この二つで立派な国になれるんだから、軍事などというものはこれはもう、やめましょう。」こういうことを言ってらっしゃる。

最近では、外務省の看板のような松永信雄さん。次官補をやって大使もやられた。もうだいぶご年配ですけれども、私の履歴書というところで、「国家というのは経済と文化、これを中心にすべきである。」と書かれている。その他の軍事というものには一言もお触れにならない。「こういうものを尊重した上での外交が一番いいんです」ということを言われた。

私はね、この体質が「ははぁ、外から圧力を受けた時は、謝る。それでも許してくれない時にはお金を出して、で、逃げてまわる。こういう体質。こういう体質に外務省がなってもう、なりきっちゃっているんだなぁ」と、こういうことを強く感じたわけでございます。



自衛隊の実態




これは何かというと、私はアメリカに責任があると思いますよ。日本に、これは徹底した。敗戦後の日本にやってきて、徹底してやった、アメリカの対日政策というのは、これは国務省が出したものでございますけれども、非軍事化というのは、これは自衛のための軍隊をとりあげる。これに基づいてマッカーサーノートが書かれたから、マッカーサーノートでは、自衛のための軍隊も否定しているんです。

これを担当したのがホイットニーという将軍ですけれども、彼が率いる民生局で、その次長のケイビスという大佐がひとまずとりまとめにあたった。彼は、若干の、ほんの少しの、良心があったんでしょう。自衛のための軍隊まで否定していいのかなぁ、という考え方があったと思うんです。そこに芦田均さんが注目して、今のような自衛のための軍隊が持てるということにしたんだろうと思います。

ここで実は、朝鮮戦争が起こった、在日米軍が朝鮮半島に行く。これは、あとどうするんだ、たいへんだぞ、ということで、マッカーサーは日本に、「警察予備隊、できれば軍隊を」と言った。コワレフスキーというその時の最高責任者の大佐が、回想録を書いているんですよ。これはもう、名著ですね。サイマル出版の、もう絶版になっちゃったんですけど、「日本再軍備」という本を書いている。このことを吉田茂さんに言うんです。しかし吉田さんは、「とってもじゃない、軍備なんかできないよ。」ということで警察予備隊を作るんです。「軍隊を作ろうとしても作れなかったんですよ」とコワレフスキーは言っています。将官クラスはほとんどパージでしょ。それからABC級戦犯はこれは処刑になっている。ほんとの下級の兵隊さんたちが中心になって警察予備隊を作った。上部は全部警察なんですよ。ですから警察予備隊と言う。このシステムが今に至るまでずーーーっと続いているんです。

この組織を、防衛庁の内局というのが、上で全部を握っている。軍制と軍令というたいへん微妙な重い仕事があります。軍令というのはもう戦争ですよ。これを東京大学法学部を卒業して公務員試験に受かった、防衛局長が一手に握ってるんです。シビリアンコントロールというのは、政治家がもっとしっかりしなければだめなのに、これがあのーーー、外務大臣クラスの人が多いんですね、今。この基本の知識がないんです。

このようなシステムがある限り、軍隊にはとうていなれないだろうと私は思うんです。これが日本国家がもっている、最大の欠陥であると私は思います。私は軍備論者かというと、そうじゃないんです。「普通の民主主義国がもっている軍隊までもっていかなければいけませんよ」と、「それが力になるんですよ」ということを盛んに言ってるだけなんです。しかしこれだけのことであっても、見る人からみると私は右翼か軍国主義者に見えるらしい。そんなこと関係ないんですけどね。まぁ、そんなことはともかくといたしまして。



軍事のたいせつさ




二十世紀の初頭に八年間大統領をやった、セオダー・ルーズベルトという人がアメリカにいる。これはあの、相当な悪ですよ。これは悪も悪も。

日露戦争。あそこで、「ロシアが極東の覇権を握ってるねぇ、これを叩かなきゃいかんなぁ。」日英同盟を結んだ、これも好感をもって見てる。それでこれを、「日本が、日本の、黄色の日本人の血で、ロシアをぶっ叩け。」叩いた。あの金子憲太郎なんかとハーバード大学の同窓で、いろんな人間的な交流はあるんですけれども、叩いた。日本海海戦を見ていてルーズベルはたまげるんです。「これはいかんぞよ」と。その前にアメリカはグアムからハワイからフィリピン、マニラ、このシーレーンを日本海軍に今後、予見し得る将来妨害されると、アメリカの太平洋政策は、アウトだ。

それまでアメリカの世界政策というのは、アメリカの艦隊の主力は、大西洋にいたんです、カリブ海ですよ。ここんところがよくわからないんですね、日本の専門家は。ここが主なんです。ここが主で、太平洋は手薄だ。ここをやられたら困るぞ。ポーツマスで調停をするんですけれども、日本に賠償金は取らせない。もっともウィッテなんていうむこうの代表がですね、ロシアの代表が、PRの専門家なんです。小村寿太郎は、日本の侍。会議の中のことは絶対にもらさない。これ、だめですよ、PRの時代は、やらなきゃ。

それはともかくといたしまして、ルーズベルトが何を言ったかというと、国際政治学の教科書、アメリカの教科書にみんな出ているでしょ。こう言ったんですよ。国家外交の基本は、「Speek Softly Carring A Big Stick」であると。「Speek Softly」ですからソフトに話す、「Carring A Big Stick」 大きなステッキを持ちながら。これ私が学生に教える時は、「でっかい棍棒を片手に猫なで声でね」と訳してるんです。(爆笑)これ、これが本質でしょ。その棍棒って何かっていうと、国力なんです。

国力というのは何かというと、国際政治の講義みたいになっちゃうんですけれども、今までの古いテキストでは、国土の広い天然資源を持った国、人口の多い国、地政学的に他から攻められにくい国。これが一番国力がある国であるとか書いてる。今はそんなことないです。ちっちゃな国でもいいんです。ただし、ちっちゃな国でもいいんですけど、基本は経済なんです。経済がだめだと軍事力をもてない。

軍事力。これはですね、すべての基本です。軍事力という単語、これはねぇ、深い含蓄を宿していると思いますよ。これがない人間は絶対に戦わない。私もおとなしいですけど、一つの許容範囲というのがやっぱりあって、それ以上やられると僕もやる。戦います。企業でも組織でも国家でも、「絶対に戦わない」ということを内外に宣言した国は、ステッキがないんです。しかし今ここで私は、軍事力とは申しません。こういう社会ですから。経済が基本です。軍事は、普通の民主主義国がもっている軍事でいいんです。これは戦える軍隊でなければならない。でも今は、戦えないです。システムもその内容もそうなんです、法体系もそうなんです。

それから三つめは、技術ですよ。四つめはなんといっても情報だ。これ全体をバランスよくもっていると、すべてが力になっていくんですが、日本ではすべてがばらばらじゃないですか。この四つのうち、基本は軍事力だと私は思うんです。

軍事が嫌だからといって、こういうことを言う人がいる。「いやーーー、戦後の日本はね、軍事を放棄したんだから、経済大国でいこうよ」「いやいや、これから技術大国だよ」「いや、IT革命が進んでいるから、情報大国だよ」と。だけど私は違うと思う。軍事は他のもので差し替えがきかないものであるということなんですね。軍事、これはただ軍隊らしくすればいい、ほんとうは軍隊にすればいいんですよ。ただし、シビリアンコントロールで、これを使うか使わないか。絶対とは言わなけれども、時によっては、外の敵と戦わなければならない。その判断は、すぐれた政治的判断であって、防衛庁の内局がやるんじゃないんです。こういうシステムにすればいいのではないかと、いうふうに私は考えているわけでございます。



強い日本へ




日本を弱くしていけばいいという勢力は、GHQのホイットニー以下ずーーーっと続いてるんです。軍国主義という声は、アメリカから出てくる。そうすると、「そうだそうだ」と大陸から出てくる、「日本の軍国主義はけしからん。」そうすると朝鮮半島の二つの国が唱和し、それにまたシンガポール、あのリークアンユーという人がまたやる。合唱をやるんです。

でも一番悪いのは、日本の中にその合唱団にくわわろうとする人間がウワッと出てきて、これに外務大臣が乗っかっちゃうことです。そうすると私やこちらの両先生のような正論が、国際的な枠組み、システムの中で、圧殺されるような仕組みになっちゃっている。これ、悪いのはアメリカだと私は思うんです。

何回もアメリカの友人たちに言ってきたんだけれども、ようやくわかったらしいです。それはですね、ガイドライン法案を作ってみてわかったんですよ。「ははーーー、この日本人はいんちき野郎だな」と。たとえばあの、朝鮮半島。北朝鮮が機雷で出てきますね。アメリカ軍は地上で戦っている。日本の掃海艇が機雷をつぶそうとすると、これは、集団自衛権の行使になるからいけないという。

自衛権というのはどこでもあるんですよね。単独の自衛権はあるんですよ。集団自衛権はある、これないとは言えない。「あるけれども行使は許さない」こう法制局長官が言っちゃった。皆さん、行使を許さない権利ってあるんですか?「田久保、お前には言論の自由はある、しかししゃべったり書いたりしてはいけない。」そんなこと冗談じゃねーーー。(笑い)こういうことが今まかり通ってるから、これを盾にとって野党、プラス与党の一部が、あのガイドラインを、めっちゃくちゃに骨抜きにしたんです。

朝鮮半島で戦争が起こる。我々は後方支援地域、これを勝手に作っているんです。戦闘とまったく関係のないところ、その範囲で遭難米軍をいくらでも助けましょう、と書いてあるんです。戦闘にまったく関係のないところで米軍が遭難するわけないんですよ、これ。(笑い)だから「なんにもやらねーってことじゃないか」ってことになるんです。アメリカもこのことにだんだん気が付いてきたんです。それで、日本に、やっぱり普通の民主主義国がもっている、普通の軍隊を作らせないといけないと。


二一世紀。アメリカは、ロシアの脅威にかわって、中国がユーラシアでどういう軍事行動をとって覇を唱えるか、世界的な大国としての覇権主義に走っていくのではないかということに関して、最大の関心をもっているんです。したがって、日本にそんなに強くなってもらっても困るけれども、今みたいな何もやらないってのでは困るよ、と。これが、ブッシュの考え方なんです。

ウィークジャパン派というのがありました。ブッシュの方はストロングジャパン派で強くしたい。

二年前に、キャンベルという民主党の人が、ある日本の雑誌、外務省から出している雑誌で語っています。インタヴューはワシントンの日本大使館の外交官がしてます。「キャンベルさん、最近日本では国家国旗、歴史、それから尖角列島といった問題で、一種のナショナリズムが起こって、アメリカから漂流しつつあるような印象を受けますがどうですか」って聞いてるんです。キャンベルが、ほんとはウィークジャパン派だと私は思っていたんですが、「私は日本人をたくさん知っています、友人がいます。しかし、一つの国が国家国旗を尊重し、尖角列島なら尖角列島の主権を主張することが、危険なナショナリズムだとは思わない。そういうことを言って日本人をけなすのは、日本に対する侮辱であろう」と言うじゃないですか。ウィークジャパン派の人ですよ。今、ブッシュ政権で、キャンベルという人は通商代表になった。これは貿易代表です。この人がちょうど一年前に共和党が政権をとったらどういうことをやるか語っている、「日本に、強くなってもらいたい。その場合、一番問題は周辺諸国だろう、これはぎゃぁぎゃぁ騒ぐだろう。その時に我々が出て周辺諸国をなだめる以外に、この世界には代わって役割を果たせる国は一国もないではないか」と、こう書いてるんです。

今、国務副長官になりましたアミテージって人がいますが、このアミテージが中心になって、一六人の日本問題専門家が、去年の十月に報告書を書いた。何を書いたかというとやはり「強い日本、国家国旗、尖角列島の主権、これを主張する人々を、我々はじーーーと見てなければいけない。日本に大きな変化が起こっていて、これをきちっと受け止める政治家と新しい日米関係を作ると、健全な日米関係になるのではないか。」と書いているんですね。

私は強烈なナショナリストですが、残念ながら同時に、アメリカとは喧嘩しちゃいけないと考えています。こんなことを言ってるのは私だけでしょうけど、自分で「親米ナショナリスト」と言っているんです。アメリカとは強いからくっつくんだ。当分この力を利用して、日本がほんとうの日本および日本人を取り戻すためには、日米安保条約の片務性を双務性に、十年かかっても二十年かかってもいいから粛々と、少しづつでももっていくということをやらなくちゃいけない。双務性に近くなるにつれて、アメリカに対する発言権は大きくなりますよ。理論的にはほんとうに平等な同盟関係、日英同盟と同じになるんです。その過程で、周辺国家が日本に不要な、「不要な」と申します敢えて、不要な、失敬な言動は、避けるようになるだろう。



まとめ




そういうところに達するには、日本はまだまだ幼稚である。しかしSMALL BUGININNG と申しますかね、小さな第一歩だけれども、歴史教科書がこれから採択に向けて大きな段階を迎えています。これが国民に認知され、支持者がどんどん増えてくるということは、日本の二十一世紀の方向を暗示しているのではないかなと、私は非常に明るい希望を持っているということを最後に申し上げて、私の発表にかえたいと思います。(大拍手)ありがとうございました。


田久保忠衛氏の、きちんと活動できる状態に軍事構造を再編し、自衛隊をできれば軍隊として動ける状態にまで持っていこうという考え方は、日本が一つの伝統ある国家としてこれからの時代も生き抜いていこうとするならば、当然の帰結でしょう。

また、日本人でありながら、日本国の軍隊に信をおけないというのは、まさにマインドコントロールされているゆえんであることを、私も表明しておかなければなりません。

田久保氏は、「日本を強くしていこう、それを支えよう」というアメリカの意向が今存在するので、この機会を逃さずに、「日本がほんとうの日本および日本人を取り戻す」作業をしていこうと考えられているようです。これは、きわめて戦略的な発想ですね。

私のような、軍隊という言葉だけで、ピクッと反応しちゃう平和ボケ人間には刺激が強かったです。未消化なので、私自身も何回も読み返して検討していきたいと思っております。重要なご提言であると思います。

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知一庵