治療指針:生活提言


抜歯後のパニック発作、弁証論治
病因病理:弁証論治




病因病理



主訴は、ぞわっとしてそののちに呼吸が苦しくなると言うパニック発作である。

29歳のころ、激務により大きく体調を崩している。激務により、強い肝鬱、そしてそれを支える腎へも負担がかかったことにより、2ヶ月にわたっての休養が必要となった。肝鬱により肺気も失調していたので、栄衛の調和を自然に取ることが出来ず、汗が出ない状態になったと思われる。

その後、仕事も落ち着き、小康状態をえていたが、半年前より、とくに精神的にきつい職場となり、身体に負担がかかるようになった。大腸から出血があり、ストレスのためと言われた。

下焦にも強く負担がかかっていたのであろう、我慢を重ね、肝鬱を強くし、内側には腎気に負担を掛ける日々であった。







半年ほど前の金曜日、このところの多忙が重なって蓄積していた疲労と肝鬱がせめぎ合っているなか、仕事が忙しく肝気をよく張ってしまった。腎気の土台が弱る中で生じた強い肝鬱は、肺気を塞ぎ鬱滞し肺は一時的に機能を失調し呼吸がくるしくなってしまった。

その後、同じように腎気が落ち、肝鬱が強すぎることによって、一時的に肺が鬱滞しそ の機能を失うことが続いた。呼吸困難の状態が継続していないのは、肺気は肝気に突かれることによって一時的に機能を失うことはあっても、肝気が納まることによって機能を取り戻しているからである。

休日の夕方、趣味のお稽古で一汗かき、肺気に負担がかかったために、ぞわっとするという肺気に急速に塞がれる徴候はあったが、休日で腎気もあり、肝鬱がそれほど強くなかったので、肺気を塞ぎ困窮させるところまでには致らなかった。

精神的なストレスは継続し、肝鬱も長く続き、ときに暴発することにより肺気を困窮させたり、心にこもり心熱を生じたり、肝の根となる腎気そのものにも負担となっていった。







もともと、一日1回便が出ないと腸が詰まった感じがして全身が苦しい、息苦しい感じになる。

腑が通じず気滞が生じると、全身の強い気滞となり肺も暢びやかさを失い息苦しくなるタイプのかたである。タバコをすうことで肝気がゆるまり、また、たばこを吸うという行為における深呼 吸の作用から肺気を敏感に大きく動くこととなり、肺の粛降作用が強く働くことで無理なく便が出、全身の気滞が取れ楽になる。







初診時のお身体は、

右の心兪に抜けがきつく、左の肝兪は陥凹して横のへりがなく広がってしまっている。これは常なるストレスにより、肝気が心をついている様、

そしてその肝気そのものもかなりへばってしまっている状態を示している。ご本人が『忍耐の限界』と仰るように、肝気でなんとか頑張ろうとしているが、頑張りきれなくなり始めている。

また、肺気も皮膚全体が薄く張った感じであり、風門肺兪の陥凹と弱りが明瞭で存る。そして肝の根を支えである腎気は継続的なきつい仕事による負担と、あばれる肝気を支えるための負担が大きく、弱りが明瞭で存る。

中焦は胃兪が大きく陥凹して弱りを呈しているが、便通も肝気がゆるむことで解決するなど、現時点ではなんとか全身を支える軸となっている。

このように、初診時点でお身体は、強い肝鬱による不安定な上焦、そして疲労により弱った腎、なんとか全身を支えている脾胃という状態であった。







7月下旬の歯科での治療は、この不安定な上焦の場で行われ、右下5番の神経を抜髓したことにより、一時的に大きな虚が生じ、身体はその虚を補うために、強く気が集まった。強く気が集まることで気滞が生じ熱を生じた。本来であれば生体の修復プロセスである。

しかしながら、この方はもともと不安定な上焦であったため、強い気滞による熱は上焦に大きく広がり鬱滞し続け納まることができにくくなってしまい、痛み止めを飲んでも眠れないほどの痛みとなった。初めの抜髓から生じた痛みは、他の歯が痛いための実痛が中心ではなく、抜髓した虚から生じた過剰な気滞が中心であったため、続いて抜髓しふたたび虚を生じさせたことでより虚が強くなり、虚より生じる気滞も大きくなり、右の顔半分、頭部という広範囲の鬱熱による痛みを生じた。







鍼灸治療では、脾腎をたて、熱の出ているところに鍼をしたことで清熱され痛みがかなり軽減。そして抜髓した局所を少し補い、全体の熱を手陽明に引いたことで、生体の過剰な修復過程による悪循環が取れ、痛みが軽減した。

痛みが軽減したものの、全身の不安定さはあり、痛みで眠れなかったことなどによる疲労はきつく、翌日もぐったりとなった。その後、頑張って出社するものの、腎気が補い切れていなかったため、再度肝鬱が強くなり痛みが発症。抜髓により生じた虚はすでに補われていたので、歯の痛みは生じず、肝鬱により生じた鬱熱のための頭痛となった。脾腎を補い、症状の鬱滞を鍼にて調整し痛みが治まる。

肝気を支える腎気の不足、不安定な上焦の肺、心により、なんらかの肝鬱となる事柄がきっかけで、バランスはすぐに失われがちな状態は継続していると思われる。




弁証論治



弁証:肝鬱 腎虚

論治:疏肝理気 益気補腎







主訴:問診

時系列の問診

切診

五臓の弁別

病因病理:弁証論治

治療指針:生活提言











一元流
しゃんてぃ治療院
ビッグママ治療室