子宮内膜症の弁証論治


子宮内膜症の弁証論治
治療指針:生活提言




治療指針



一番の問題は、強い肝鬱である。そして強い肝鬱の継続からから生まれる瘀血 である。

この肝鬱をいかに緩めるかという点に対して、本症例ではまず第一に肺気を充実 させ華蓋をしっかりとさせ、過度の上逆を防ぐことが考えられる。過度の上逆が 納められると、腎気の養いが促され、内側の気の升降出入を生理的な範囲に支え ることが出来るようなる。そしてまた、肺気を養うには、脾気を養うこととなる。

肺脾を養い肝鬱をうけめられる素体作りをしていきたい。

第二に、不妊治療でいためがちな、腎気をたて、月経のリズムを支えるより所を つくることである。




生活提言



Fさん こんにちは 人間の身体は、精神と肉体でできているとよくいわれます。

東洋医学の世界では、その精神の動きを、肉体に密着させて一体感を持って考えられています。

精神の問題を東洋医学で考えると、五臓それぞれに配当して考える場合もありますが、 人間はひとくくりにまとまって存在しているわけですから、神志身命の動きを中心に 自己という存在を突き動かしていく精神のありようを考える必要が あります。この動きを東洋医学の世界で語られる五臓(肝、心、脾、肺、腎)のうちの 「肝」のありようとして考えています。具体的には、生きようとし、 生きているものの「やる気、生きる意志」であり、この「やる気、生きる意志」が 人間の身体をぐっと力強く前に向かって立たせるものでもあると思います。 よくお年寄りが「気が張っているのがとれたら、ぐたっとしてしまった」などという 話を聞くことがあると思います。このときに張っている気が「やる気、生きる意志」の 示すところの肝気です。そしてこの肝気は、大地とされる脾腎(胃腸の力、土台の力)に 根ざし、天空(心肺)に向かって枝葉をしげらせています。しっかりとした土台にどっしりと 根を張り、天に向かって健やかに生きているというイメージです。







Fさんの場合、小さいころから、この肝気をぐっと張るタイプだったのだと思います。

肝気の張り方が過度であったため、天空に向かって枝葉が繁茂しすぎて支えきれず、吐き気、 めまい、悪夢などなどさまざまな自律神経失調症気味という症状を出していました。

一人暮らしもとても気が張りますね。ここで、もう一段肝気を奮い立たせてがんばってしまったので、 体重が落ちたり、眠りが浅くなったりして、肝気を支える脾腎の土台の力が弱くなってしまったのでは ないかと考えられます。小さい土台では、その土台分しか肝気を張ることはできません。でも、 モチベーションが高く、しっかりとがんばろうという頑張り屋さんのFさんは、ここで、土台は小さいのに、 もっともっと肝気をしっかり張ってがんばるということをされました。

ここで、肝気の張りすぎ、東洋医学の世界でいう肝気鬱滞の状態になったわけです。







この強い肝気鬱滞のせいで、月経のリズムがスムーズにいかなくなりました。 鬱滞があるために、月経がおこるときにスムーズに下に通じることができず、この鬱滞の中を がんばって下に通じさせるということになり、強い痛みになりました。また、子宮まわりに おける強い鬱滞がつづき瘀血という古血がたまる状態も引き起こすことになりました。

素体として肝気鬱結気味であるのに、瘀血という病理産物もくわわったため、より子宮まわりの 環境が悪化し、きつい生理痛になり、子宮環りだけではなく、全身に負担をかけるようになってしまったと思われます。この瘀血が発症する要因には、もう一点、冷えの問題があります。時系列的に考えると、 どの時点での問題が中心なのか、いまひとつはっきりしませんが、高校生時代の冷える生活や、 シャワーだけの生活が、身体を冷やし、瘀血を産みやすくする素因になっていたと思われますし、 全身の負担があったために、冷えの入り込みなどにも弱くなったのかもしれません。この 身体の中の冷えの問題も、瘀血を悪化させ、痛みを強烈にさせる要因になったのではと考えられます。







ラバロの手術は、この瘀血を物理的に取り除いてくれたために、一時的に生理痛が軽減されました。

しかしながら、素体の強い肝気鬱結や、子宮まわりの気血の流れがスムースにできる下焦の力(腎気)が不足しているため、また不妊治療で下焦に負担をかけたために生理痛がぶりかえしています。

鍼灸治療や自宅施灸が奏功したのは、肝気の鬱滞をとりのぞき、 身体の中の気血のめぐりをスムーズにすることができたことと、土台の力をつけることができたため、 過度の肝気鬱滞状態がなくなり、生理前のイライラ、体重の増減、疲れやすさ、 気分の落ち込みなどがへり、寝付きもよくなったと思われます。

「肝気をぐっと張ってがんばる」というライフスタイルは、几帳面でしっかりとした人生を切り開いて いくときの原動力となっていたのだと思います。しかしながら、この肝気が過度に張るために、御自身の素体以上にがんばってしまい、疲れやすかったり、そして土台の力が消耗されてしまったりします。

がんばりやさんは、「人間として美しい」と私は思います。

がんばる肝気をはって生きる人は、人として前向きで、すがすがしいからです。

でも、がんばりすぎの肝気は、身体の中を暴走しますし、身体の土台の力までも損ないます。

では、どうやったら、このがんばる肝気を暴走させず、身体に向かう刃とさせないかを 考えなければなりません。







しっかりと肝気を張って前向きにいきるときに、本来的には、御自身の土台の器の大きさに 準じて、肝気を張るべきだという原則があります。植木鉢に植物を植えるときに、植えるものの 大きさと植木鉢の大きさをマッチさせることは大事ですよね。小さな植木鉢に大きな木を植えると ひっくり返ってしまいます。Fさんはまさに、この状態で、小さな植木鉢であるのに、大きな木を植えているのです。

大きな木の枝葉をちょっと払い負担減らすこと、これが肝気を張り過ぎないということです。

そして、植木鉢を少しでも大きなものに改善していくことが脾腎の土台の力をつけることです。

肝気を張り過ぎないようにすることは、御自身の生きる意志との調整だと思います。「過度」に 「やる気、生きる意志」をもちすぎないようにすることも大事です。 そして、土台をつくるのには、ゆっくり歩いて散歩することや、毎日のお灸が有効です。これらは、 土台の力を少しづつつけてくれると思います。

そして、御自身のありようが、小さな植木鉢の大きな木であることを自覚して、アンバランスが過度に ならないように上手に人生をいきていただければと思います。きっとその調整方法は、上手に 会得されていかれるのではないかと私は感じています。

赤ちゃんが欲しいというご希望には、鬱滞のないスムーズな気血の流れと、ご自身のささえとなる 大きな植木鉢がとても大事です。意識することで少しづつ少しづつ改善されていきます。

暢びやかに過ごしていただければと思います。







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治療指針:生活提言











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